みなさんは普段の臨床で体温や血圧などのバイタルチェックをすると思いますが、
高齢者の場合は正常値ではないことも多く、
変に慣れてきて
「気にしすぎていたら高齢者のリハビリなんてできない」
と思って、リスク管理を少し怠ってしまっていたりはしないでしょうか?
しかし、万が一にでも患者さんの容体が急変してしまったら・・・
最悪の場合、お亡くなりになってしまうということも十分に考えられます。
1件の死亡事故には潜在的に29件の事故、300件のニアミスがあると言われています。
今はまだ経験していなくても、
ちょっとしたミスが300回目になった時に1人の命が失われているかもしれません。
今日は基本ではありますがもう一度運動療法の中止基準についておさらいしてみたいと思います。
運動療法の中止基準をきちんと理解していますか?
運動療法の中止基準、または途中で中止する基準をいかにまとめてみました。
- 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍40/分以下または120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下
- 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現 した場合
[2] 脈拍が140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇
した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化
- いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合
- その他の注意が必要な場合
[1] 血尿の出現
[2] 喀痰量が増加している場合
[3] 体重増加している場合
[4] 倦怠感がある場合
[5] 食欲不振時・空腹時
[6] 下肢の浮腫が増加している場合
では、なぜこれらの基準で運動療法を中止もしくは注意しながらの実施となるのでしょうか?
注視する基準について各項目を詳しくみていこう
まず血圧ですが、
血圧が200mmHg以上になると脳の浮腫により
頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、意識障害、痙攣などが起きる可能性があります。
さらに高血圧にさらされ続け脆くなった血管から出血し
脳出血、血管が詰まって脳梗塞などの脳の障害も起こります。
また高い圧力で血液を押し出し続けた心臓は新肥大を起こし、
ゆくゆくは心不全を起こす可能性もあります。
高血圧ほど重要視されてはいませんが、
低血圧もめまい、頭痛、倦怠感、湿疹などの症状の他にも
各臓器へ送られる血液量が減少し臓器の機能障害を引き起こします。
続いて脈拍ですが
脈拍が多すぎると心臓が空打ちし、
うまく血液を送り出せなくなり心停止発作を起こすこともあります。
脈拍が多い状態で過度な運動療法を実施すればさらに脈拍が多くなり、
上記のリスクが伴いますよね。
また脈拍が少なすぎると十分な血液を全身に送れない状態ですので、
そこに過度な運動療法を実施し普段よりも血液を必要な状態にしてしまえば
めまいや失神、疲労感などの症状を引き起こしてしまいます。
では、次はSpO2です。
ご存知のようにSpO2は血液中の酸素飽和度のことです。
これが低い状態で過度な運動療法を実施してしまえば、
体はさらに酸素が欲しいのに酸素が足りないという状態になりますので、
やはりめまいや失神、疲労感などの低酸素による症状を引き起こしてしまいます。
SpO2は90%以下になると「呼吸不全」となります。
いかがでしたか?
代表的なバイタルチェックである脈拍、血圧、SpO2は
数字で共有できる簡便かつ重要な指標です。
既往歴によるリスクもありますが、
それも上述のバイタルで判断できることも多々あります。
もう一度、初心に帰ってバイタルチェックとリスク管理をしてみてください。
もしあなたがリスク管理がきちんとできていないな、
心不全や高齢者のリハビリの評価が苦手だなと感じているのなら、
これらのセミナーをお勧めします。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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