「リハビリテーション栄養」という言葉を知っていますか?
近年、フレイルやサルコペニアといった高齢者に多い虚弱状態が問題視されるようになってくるのに併せて、この「リハビリテーション栄養」という考え方が注目されています。
「リハビリテーション栄養」は
栄養状態も含めた多角的なアプローチのことです。
「攻めの栄養療法」とも言われます。
セラピストが栄養の知識を身につけることで、
より効率的で効果的なリハビリプログラムを構築することができます。
脳卒中などの場合、嚥下障害を併発する症例も多いです。
STだけでなく、PT・OTが栄養面の知識をもって介入することで、
リスク管理、適切な負荷量の設定、などが行いやすくなります。
逆に、栄養面の管理や言語聴覚士だけでなく、
理学療法士や作業療法士がともにチームとして嚥下機能に対してアプローチすることで、
誤嚥性肺炎の予防にもつなげることができます。
そこで今回はリハビリテーション栄養について、解説します。
リハ栄養の定義とは?
リハビリテーション栄養は、
「栄養状態も含めて国際生活機能分類 (International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)で評価を行ったうえで、障害者や高齢者の機能、 活動、参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うこと」
と 定義されています。
(Wakabayashi H, Sakuma K. Rehabilitation nutrition for sarcopenia with disability: a combination of both rehabilitation and nutrition care management. J Cachexia)
つまりリハビリテーション栄養とは、
リハビリと栄養管理を同時に行って最大限の治療効果を狙う介入方法です。
リハビリテーション栄養学会診療ガイドライン2018年によると、
「脳血管障害の急性期患者では、リハに加えて早期のNST介入を行い、患者の状態に応じた経路選択の上で、高カロリー・高濃度蛋白の投与を併用していくことが期待される」
「大腿骨近位部骨折の高齢者では食欲の低下を多く認める。そのため栄養摂取量を上げることを目的に常食に補助栄養剤を追加し強要することは、精神的負担を増大させる可能性がある。また、味覚の変化や嗜好によって栄養摂取量は左右される可能性があり、介入期間や方法の個別設定が必要になると考えられる。」
「大腿骨近位部骨折の患者では,受傷時もしくは術後早期における栄養評価スクリーニングの標準化が重要である。特にスクリーニングされた低栄養・低栄養リスクの患者については,栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)が早期から継続的に患者の栄養管理や栄養指導に介入する体制づくりが求められる。」
とあります。
リハ栄養を考えるなら知っておきたい「低栄養」と「サルコペニア」
低栄養の患者様に必要以上の負荷量をかけて筋トレしたらどうなると思いますか?
栄養不良はサルコペニアの要因となります。
ともすれば筋肉が肥大するどころか萎縮していくことになるのです。
筋肉を増やすためにトレーニングをしていたら、そのトレーニングによって筋委縮が起きてしまうなんて、誰も考えもしないですよね?
しかし、実際に起こり得るのです。
サルコペニアとは、加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、
全身の筋力低下や身体機能の低下が起こることを指します。
患者の多くは、
- 疾患発症前からの低栄養、
- 急性期病院での栄養状態の悪化、
- 回復期リハ病棟での不適切な栄養管理
などで、栄養状態が低下しやすい状態にあります。
低栄養は施設入所者のうち40.8~50.5%、
サルコペニアはリハ対象者の約50%にのぼります。
回復期リハ患者において、体重減少は機能・ADLの改善に関連する重要な因子です。
リハ対象者に低栄養やサルコペニアを認めると、認めない場合と比較して、
機能回復・生活の質・再入院率・死亡率が悪化します。
リハビリテーションを行う上で、
低栄養(体重減少)やサルコペニアは予防・改善しなくてはならない重要な問題なのです。
サルコペニア高齢者に対する運動療法と栄養介入の組み合わせで
筋肉量・筋力、および歩行速度の改善効果を示したという報告があります。
また、別の報告では、
たんぱく質補給と併せてレジスタンストレーニングを実施した高齢者は、
レジスタンストレーニングのみの場合と比較して除脂肪体重と脚力の増加をみられています。
(引用元:「攻めの栄養療法」実践マニュアル)
【関連記事】
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リハ栄養における栄養管理のポイント
リハビリでは、必ずと言っていいほど「運動療法」が行われます。
運動をする場合、エネルギーが消費されます。
ただ、人間は運動をしていてもしていなくても最低限のエネルギーは消費しています。
ただ生きているだけでもカロリーを消費しているのです。
リハビリ以外での生活上のエネルギー消費量と
リハビリでの運動で消費されるエネルギー消費量を考えなくてはいけません。
ただし、筋肉量の増加や筋力増強には、これを上回るエネルギーつまり栄養を取らなくてはいけないのです(エネルギー蓄積量)。
低栄養患者の場合は、体重増加を目指して200~750kcal/日のエネルギー蓄積量の追加、
高齢者では1㎏の体重増加には、8800~22600kcal必要と言われています。
入院中の患者さんの食事のカロリー表を見たことがありますか?
私の記憶だと、だいたい1500~1800kcal、2000kcalという数字は見たことがありません。
これでは筋力増強、機能回復どころか栄養状態の悪化にもつながりかねません。
今の栄養状態はどうなのか(低栄養やサルコペニアに陥っていないか)、
機能回復にはどれくらいのエネルギー・栄養が必要なのか、
今の提供されている食事の栄養管理はそれに見合っているか、
きちんと評価・把握したうえでプログラムを立てていくことも必要になります。
また、サルコペニアとアミノ酸の関係はかなり注目されています。
健康な70歳以上の人に必要な蛋白質は1日に男性60g、女性50g以上とされています。
体内で合成できない必須アミノ酸のうち、ロイシン・イソロイシン・バリンは分岐型アミノ酸であり、
アクチンとミオシンの主成分であるため特に重要です。
分岐型アミノ酸は,肉類,乳製品,レバーなどに多く、
高齢者で摂取が少ない場合、サルコペニアになりやすいといわれています。
高齢者にアミノ酸供給を伴ったレジスタンス 運動が最も効果的という意見もあります。
(引用元:「サルコペニアとリハビリテーション」Jpn J Rehabil Med 2017;54:609-616)
【併せて読みたい】
質の高いリハビリテーションを目指したら栄養管理は重要です
そもそもの摂取カロリーや、アミノ酸摂取が足りていない場合、
補助食品や飲料をうまく使っていくことも大切になります。
管理栄養士や主治医と相談しながら
チームとしてアプローチを進めていくことが大切になってきます。
在宅においては更に栄養面のケアは難しくなるかと思いますが、
ご家族とも情報交換や話し合いをしながら気にかけておかなくてはいけませんね。
運動療法と栄養管理を掛け合わせていくことで
よりよいリハビリテーションを提供できるのではないでしょうか。
さて、ここまで読んでくださったあなたが
「リハビリテーション栄養を学びたい!!」
と少しでも思ったのであれば、池田先生のリハビリテーション栄養のセミナーを受講してみてください。
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エポックでリハ栄養といえば、池田先生です。
今回は栄養の基本となるカロリーについて。
近年では太らないようにカロリー制限をすることが多いですが、カロリーが身体を動かすエネルギーそのものですので、これがなければ話になりません。
ぜひこのセミナーでカロリーについて詳しく理解できるようにしましょう。
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