自殺の危険因子である「うつ病患者」の理学療法士・作業療法士が全国的に増えてきています。
- 理学療法士・作業療法士を含む日本人はストレスに弱い!?
- 理学療法士・作業療法士等の医療従事者のメンタルヘルスについて
- 理学療法士・作業療法士等の医療従事者の安全(健康・メンタルヘルス)=医療安全
- リハビリ職種は何よりも「まずストレスチェック」を
- 【最後に】理学療法士・作業療法士こそ心身の安定を
日本での自殺者は 1997年以降上昇傾向にあり、
1998年以降では連続して自殺者が3万人を超え、
2012年は15年ぶりに3万人を下回りましたが、
依然として深刻な状況が続いています。
自殺の主要因は「うつ」と言われており、
うつ病患者も年々増加しています。
厚労省の行った「精神疾患調査」では、
うつ病などの気分(感情)障害が、
1996年度は43万人でしたが、
1999年度は44 万人
2002年度は71万人
2005年度に至っては92万人
と急激に増加の一途をたどっています。
そして、医療業界でも例外ではありません。
医療業界では5%がうつや不安障害の傾向にあると言われています。
人々を救う立場にある「医療従事者」は
自らが心身健康である必要性があり、
自身の心の不調に気づき
ケアしていくことが大切です。
「医者の不養生」とはよく言いますが、
それはすべての医療従事者の心の健康においても
同じことが言えるのではないでしょうか?
理学療法士・作業療法士を含む日本人はストレスに弱い!?
そもそも、
日本人は欧米諸国と比べてストレスを受けやすい国民性にある
と言われています。
「職場でストレスを感じるか」という調査において、
日本では6割以上の人がストレスを感じているのに対し、
US/UKでは3割程度と日本と大きく差がみられているのです。
そもそものストレスに対する認識が、
欧米諸国と比べてネガティブなイメージを持っている人が多いのも原因
ではないでしょうか。
(日本とUS/UKのストレス結果比較)
■ストレスに対する考え方の違いが浮き彫りに。日本では「多少のストレスには対処できるが、仕事のクオリティが損なわれる」が33.8%で1位、US/UKは「少しストレスがあったほうが集中できて仕事がこなせる」で34.3%。
ストレスと生産性の関係について、最もよく説明しているものはどれか、当てはまるものを選んでもらったところ、日本では「多少のストレスには対処できるが、仕事のクオリティが損なわれる」が33.8%で1位であったのに対し、US/UKは「少しストレスがあったほうが集中できて仕事がこなせる」が34.3%で1位となり、両者のストレスに対する考え方の違いも見える結果となりました。
ストレスと生産性の関係の記述について「そう思う」と回答した割合で、US/UKでは「管理者は私の仕事量を正しく理解している」が51.1%であったのに対し、日本では30.7%と差が出る結果となりました。また、「会社の成長に個人として責任を感じる」についてもUS/UKは半数以上が「そう思う」のに対し、日本では33.9%という結果になりました。
(『会社員の働き方とストレス・生産性の関係調査』http://hr-mental.jp/pubnews/dtl/4174)
理学療法士・作業療法士等の医療従事者のメンタルヘルスについて
実際、厚生労働省の報告によると、
医療・福祉(医療業)は、精神障害の労災請求件数の多い職種(大分類)の第2位を占めています。※なんと1位は社会福祉・介護事業です。
アメリカにおける調査では、
チャイルドケアや在宅医療介助など
パーソナルサービスに従事する人が、
各種職業の中でうつ病にかかる割合が最も高い
ことが分かりました。
過去1年間に大うつ病エピソードを1つでも経験した人の割合をみると、
パーソナルケアやパーソナルサービスに携わる人では10.8%
となっていました。
医療従事者の労働の多くは、
仕事量、責任の重さ、忙しさ、
など、
いずれも他の職種と比べて、
かなりストレスフルなものである
と言えます。
看護師を例とすると、
職業性ストレスの職種差を検討した研究において、
看護師は他の職種に比べ、量的労働負荷(仕事量)や
労働負荷の変動(仕事量の変動)が大きく、
仕事のコントロールに関しては、
他の専門技術職や事務職に比べて低い
という報告があります。
また、看護職特有のストレッサーの具体的内容としては、
・仕事内容による緊張感(例:人命に関る仕事など)
・チーム医療に関すること(例: 看護師に対する医師の理解不足など)
・労働環境に関すること(例:時間に追われる仕事、仕事量が多く時間外勤務が多い、交代制勤務で生活が不規則になるなど)
・患者・患者家族との関係に関すること(例:無理な要求をされる、威圧的な態度を取られるなど)
など、様々な原因が指摘されています。(※日本看護協会ホームページより一部引用)
リハビリテーション職においても
同様のストレス要因が大いに考えられ、
「医療職種が精神疾患に罹患するリスクは非常に高い」
と言えるでしょう。
このように、
理学療法士・作業療法士を含む医療従事者は潜在的に精神疾患の予備軍が多い
ことが指摘されています。
人の命を救うべき医療従事者が、
「うつ」にならずに働けるようになることは、
医療業界における「重要な解決課題」の1つ
であることには間違いありません。
理学療法士・作業療法士等の医療従事者の安全(健康・メンタルヘルス)=医療安全
企業のメンタルへルスを含む
健康管理の取り組み状況を見ると、
一番遅れているのが医療業界
とされています。
次に製薬会社、医療機器メーカーと
医療関係ほど健康管理の対策が遅れているのが現状
です。
医療エラーリスクに「直接的」または「間接的」に結びつく根本要因として考えられるのが、
・経験年数の少なさ
・技量不足
・仕事に対するストレス
・睡眠の障害
と言われています。
医療エラー、
特に「ヒューマンエラー」には医療従事者のメンタルヘルスの問題も強く関わっている
と言えるでしょう。
つまり・・・
医療従事者の安全(健康・メンタルヘルス)=医療安全
となるのです。
リハビリ職種は何よりも「まずストレスチェック」を
医療現場でのメンタルヘルス対策では、
ストレスチェック制度が有効である
と言われています。
ストレスチェックを実施することによって、
職場のストレス要因が特定できるので、
その職場に合った対策を取ることができ、
ハイリスク者の抽出・ケア
といった個人的な面だけでなく、
職員満足度の向上、職場の負荷の分散
といった企業全体の経営向上にも有用である
と指摘されています。
これに加えて、
「労働環境の改善」
「管理者がメンタルヘルスへの理解を示し、スタッフへの教育・ケアを行える体制を整える」
ことも、重要となってくることでしょう。
【最後に】理学療法士・作業療法士こそ心身の安定を
いかがでしたでしょうか?
我々、理学療法士・作業療法士といった医療従事者は、
「医学的な専門知識を持っているから自分は大丈夫!」
と思いがちですが、
「専門知識を持っているだけ」
と
「専門知識を持ちながら、自身のメンタルヘルスに活用する」
こととは別物です。
仕事をしていれば誰しもが疲れ・ストレスを抱えることでしょう。
しかし、
「ストレスを抱えすぎて「うつ」になってしまったり」
「過度な疲労の蓄積で体調を崩してしまう」
というセラピストが増えてくると、
適切なサービスや治療を受けるべき
患者さんに支障をきたしかねません。
理学療法士・作業療法士になった人の多くは、
「相手を思いやれる人」だからこそ、
「自分の心身も思いやって健全に働ける」ことが、
患者さんにとって、何より一番良い結果に繋がっていくことでしょう。
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